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広告運用におけるデータの精度は本当に人の判断精度より高いのだろうか?

 

 

 

前回(約1ヶ月程前になってしまいますが)は、スモールビジネスの広告運用における「自動化ソリューション」の親和性について考えをまとめてみました。

 

 

参考:一番自動化ソリューションを使いたいスモールビジネスが、一番マッチしない件について考えてみる

 

 

詳細は前回の記事を是非読んでいただければと思いますが、簡単にポイントだけ要約してみたいと思います。

 

 

①スモールビジネスの場合、対象となるターゲット領域が狭く、月数万円多くても数十万円程度の広告予算で十分な配信できるケースがほとんど。

 

 

②獲得できるコンバージョンのボリュームが非常に少ないため、「データ」を軸に統計的有意差だけで分析・傾向を導き出し、「最適化していくことが非常に困難

 

 

③①②の点を考慮すると、スモールビジネスの広告運用において「データ」を中心とした「媒体の自動化ソリューション」は親和性が低く、十分な成果が出にくいことが多い。

 

 

④必要なのは「データ」だけに任せず、「人」の経験・知恵を意図的に加えた「総合力で勝負」することである

 

 

といったところでしょうか。

 

 

今回は一応後編ということで、最後のポイントである「データ」だけに任せるのでなく「人」の経験・知恵を意図的に加えた「総合力で勝負」が必要ということがどういうことなのか、ここをもう少し具体的に考えてみたいと思います。

 

 

広告運用に求められる運用の'精度'とは?

 

 

まず前提として考えなければいけないのが、広告運用で成果を出すために求められる各種アクションの品質・精度は非常に高いレベルである、ということです。

 

 

例えば、キーワードやターゲティングの選定、入札の強弱の実行などの各種施策ををおこなう際、大枠がマッチしているという”80点”程度の品質・精度ではなかなか思った成果が出ないことがほとんどです。

 

 

後ほど具体的な例を交えながら説明していきたいと思いますが、成果を出すためには”90点、95点”といったレベルまで各種アクションの品質・精度を高めることが必須条件になります。

 

 

それでは具体的な例を交えながら説明していきたいと思います。例えば、リスティング広告のキーワード選定を例に考えてみたいと思います。

 

 

例としてJR田町駅近辺で長崎の対馬料理を扱っている居酒屋のリスティング広告をサンプルに考えてみたいと思います。

 

 

この店は長崎の対馬から空輸で新鮮な海鮮をその日に仕入れ、提供することを売りにしています。

 

 

また長崎をはじめ、九州地方の地酒も豊富に揃い、お店の佇まいは古民家風の一軒家で落ち着いた空間で料理を楽しめるのが特徴です。大人の隠れ家といった感じのお店をイメージしてもらえると良いかと思います。

 

新鮮な地元の食材、各座席間の幅を贅沢にとった空間設計も相まって、少し客単価が高いお店です。

 

 

少しはイメージはつきますでしょうか?

 

 

このお店がリスティング広告を初めて出稿する際のキーワード選定について考えてみたいと思います。まず候補として4つ程の選択肢があるとします。どれがリスティングを出稿する上で正しいキーワードになるでしょうか?

 

 

①田町 居酒屋

②田町 海鮮居酒屋

③田町 居酒屋 和食 個室

④田町 居酒屋 対馬

 

 

広い意味では全部正解です。

 

 

ただし全部のキーワードを配信し続けると、あまり成果が出ない広告運用になるケースが高い、と想定されます。

 

 

この理由が広告運用で求められる"品質・精度"のレベルを表しています。

 

 

今回のケースで一番特徴を表しているキーワード(=精度が高い)は④になり、④ > ③ > ② > ① の順番で

お店の関連性を表しています。特に①や②で検索しているユーザーのニーズを想像してみると、

 

「新鮮な海鮮が食べたい」

「落ち着いた空間が良い」

「単価は少し高めでもOK」

「対馬のご当地グルメ」

 

といったニーズを持ち合わせている人はかなり少ない可能性が高いはずです。

 

 

そのため①②で検索してサイトに訪れてみたけれど、実際の予約にはつながらないみたいなことが多くなります。クリック数は伸びるけど、ちっとも予約が入らない、みたいなことが起きるわけです。

 

 

ただ①~④全てのキーワードにおいて、繰り返しになりますが「 80点 」以上の"品質・精度"(=ここではマッチングの精度)は確保されています。「田町にある居酒屋」というところまできっちりニーズを絞り込めているキーワードという意味では、一般的にはかなり精度が高い分類に入るかと思います。

 

 

ただ広告運用で成果を出す観点でキーワードを眺めると、①②のキーワードの"品質・精度"ではまだまだもの足りず最低でも③以上が欲しい、そうしないとユーザーとお店のニーズマッチングは難しい、となると思います。

 

 

今回の対馬料理を展開しているビジネスオーナー(=人)であれば、この4つの中からどのキーワードが自分達のお店に一番マッチしているか、一瞬で判断することは容易です。

 

 

ただし一方で今のデータアプローチ型の「自動化ソリューション」では、この4つから③と④、①と②を区別し、選定することはなかなか難しい問題のような気がします。①から④までの"80点"以上の"品質・精度"を確保することはできるのですが、この対馬料理の居酒屋にとって③④ > ①②をジャッジできる残り20%のきめ細かいレベルの判断差が難しいのです。

 

 

恐らくこの店特有の「データ」があれば③や④まで学習し、傾向値を見出して判断できる可能性は高いですが、そもそも田町という限られた地域でビジネスを展開する広告主にとって、学習・傾向値を見出すことができる程の「データ」を貯めることは事実上不可能に近いので、物理的には①から④まで区別することが現時点では難しくなるわけです。

 

 

ここが広告運用における「データ」アプローチ型の自動化の弱点になります。

 

 

ではどうするのか、答えはシンプルに残り"20点の精度"に「人」の経験・知恵を足すことだと考えています。広告運用という特定のシーンケースにおいて、正解の可能性が高い選択肢の中から、人の経験・知恵といったデータ的にはなんら根拠はない要素 = ”飛躍”というバイアスが含まれた判断を加えることで実現していく。

 

 

80点の精度の汎用的選択肢を「データ」アプローチ型で絞込み、そこに特定のシーンケースに即したナビゲーションをでその道のプロでなくても、「人間の経験・知恵」で十分判断・対応可能なレベルで恣意的に飛躍させる、このサイクルが回せる仕組みこそが総合力のある「自動化ツール」だと考えています。

 

 

バイアスだらけのマーケティング活動で、信頼に足る「データ量」が確保できるのか?

 

もう1つの切り口、こちらはよく自動入札の論点で起きやすい話を最後に簡単に記載したいと思います。

 

 

そもそもマーケティング = ビジネスの活動とは、常に「違い」を創ることが本質だと思います。他社サービスとの違いをつくり差別化を図ることで、ユーザーに新しい魅力を伝え、購買意欲を掻き立てていくため、常に何かしらの新しい仕掛けを行っています。

 

 

マーケティングの視点だけ切り取っても、広告の投下量やポイント、メッセージも常に違うと思いますし、販促的なキャンペーンや割引なども常に手を変え、品を変え実施している。その「違い」を創る活動が本質の中で、過去の蓄積したデータから傾向値を算出してアプローチする判断・実行の精度にどれほどの信頼性があるのでしょうか?

 

 

たとえ傾向値を出せる程の十分なデータサンプル量があったとしても、常にバイアスだらけの中で、そのデータから導き出された傾向値の"精度は何点"のものなのでしょうか?

 

 

広告運用の中でもを「データアプローチ型」の自動入札を導入している所は多いかと思いますが、完全に自動入札にまかせているケースは実際にどれぐらいあるのか。これは個人的な見解ですがほとんどNoだと思っています。

 

 

「土日に新しいキャンペーンを展開するから、手動で入札金額を強める」

「来月予算が急激に減ったから、月初手動で弱める調整をする」

 

 

など今までの「状態」に対して大きな変化があった場合、常に「手動」で調整という選択肢をとっており、なんだかんだ毎日調整している、みたいなケースがほとんどな気がします。

 

 

これはこれで正しい使い方かもしれませんが、どうせ手動調整を入れる必要があるのであれば、手動調整を入れやすく = 入れるべき箇所に対して最小の労力で入れやすく、設計されたものがあれば本当はもっと成果が出るし、かつ便利だと思います。

 

 

少し抽象的な部分があったり、逆に極度に具体的な部分を書いたりなど幅がある文章になってしまいましたが、これからの広告運用において「自動化」ということをもっとパワフルに実現していくことを考えた場合、僕達は今の「データアプローチ型」だけでは完全な実現はなかなか難しいと考えています。

 

 

「人」の経験・判断の力を、広告運用の自動化の一連の流れの中でどう組み込めばより高い広告成果が出るのか、そういう視点で解決していくことが広告運用の世界では非常に大事なのではないでしょうか。

 

 

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ShiroKuro

ShiroKuro

インターネット広告の代理店で運用を10年。コンサルティングやオペレーションの仕組み・サービス設計を担当。その後、独立してWebエンジニアへ転身。Webマーケティングのオペレーションエンジンを日々開発中。 #twitter https://twitter.com/ShiroKu93776123